花粉・ハウスダストなど、微細なゴミの種類
ひとくちに「アレルギー」といっても、非常に沢山の種類があります。花粉症やペットの毛の肌に対するアレルギー、アトピー性皮膚炎やアトピー性ぜんそく、あるいは食品アレルギーもそうですし、パソコンなどから発生する電磁波が原因とされるアレルギーなど、様々です。
このうち、掃除機やクリーナーで対策できるアレルギー原因物質としては、空気中に存在し、口や鼻などから吸入する可能性がある物質、すなわち花粉やハウスダスト、カビ菌などがあります。
これらは掃除機の世界では「微細なゴミ」や「細塵(さいじん)」といった呼ばれ方をしており、いわゆるホコリや髪の毛などの大きさのゴミよりもかなり小さく、ほとんど目に見えません。
アレルゲンの大きさの例
※単位のμm(マイクロメートル)は、「ミクロン」とも呼ばれ、1μmは0.001ミリメートルにあたります。
- ダニアレルゲン(ハウスダスト):10μm~数mm
- カビアレルゲン:3~10μm
- 花粉アレルゲン(杉、ひのきなど):20~40μm
- 黄砂:0.5~5μm
- PM2.5:2.5μm以下の微粒子(1.2~2.5μmほどといわれます)
では、こうした微細なゴミを部屋から取り除くためには、どのような掃除機が合っているでしょうか?
アレルギーを誘発する微細なゴミを取り除く掃除機の条件
「より多くのアレルギー物質を取り除くためのクリーナー」、この問いに答えうる性能を持つ掃除機のイメージとしては、以下の基準が挙げられるでしょう。
ヘッドを含むクリーナー全体の集塵性能が高い
まず、掃除機として微細なゴミまでしっかりと集じんするもの。これが前提となります。「吸込仕事率が高い=ゴミがよく取れる」わけではなく、いわゆる「集じん性能」(床からどの程度のゴミを取り除くことが出来るか)が問題となります。
本体のパワーも大事ですが、ここでは各掃除機のヘッド部分の性能が特に重要で、細かいゴミを取るための集塵性能に特化したヘッドのメーカーもあれば、ヘッドの強力さよりも軽く進ませること(=使いやすい、かけやすい)を重視しているメーカーもあります。
排気のレベルが一定以上(アレルゲンをキャッチできる)の性能である
掃除機が吸ったアレルギー物質や微細なゴミを排気としてそのまま出してしまっては意味がありません。掃除機が吸ったゴミの通り道として以下の流れとなります。
(1)サイクロン式はダストカップ、紙パック式は紙パックへゴミが入る
サイクロン掃除機であればより遠心分離の力が強ければ微細なゴミを分離でき、高性能な紙パックを使っているほど紙パックの目が細かく、微細なゴミが外に出ていきません。
(2)クリーナー内部に搭載されているフィルターを通し、排気として空気が出ていく
ダストカップや紙パックで捕らえきれない、微細なチリは排気として抜ける前に、クリーナー後方のフィルターを通ります(廉価タイプはこのフィルターがなかったり、目が細かくないことが多い)。
このフィルターも目が細ければより小さなゴミを逃さないということになります。これらの微細なゴミをどれくらいキャッチできるかが、掃除機のアレルギー対策のカギです。
ゴミ捨て時やお手入れ時にアレルゲンが再度空気中に舞いにくい構造であるか
紙パックやダストカップにアレルゲンを含むゴミが入っている状態で、このゴミを捨てる際にホコリが舞ってしまう構造になっていないか、またサイクロン掃除機であればダストカップやフィルターのこまめなお手入れが必要な機種もあるため、お手入れ時に再度アレルゲンが空気中に舞ってしまう構造では完全なアレルギー対策とはいえません。
床以外の場所に付着したアレルギー物質を除去できるアタッチメントがある
見落としがちですが、アレルギー対策として重要なのがこの4点目です。床を掃除するのはもちろんですが、ベッド(布団)や部屋の隅、隙間、高いところ、洋服などあらゆる場所にアレルギー原因物質は付着します。
「10μm以下の物質は床に落ちず、絶えず空気中を舞っているか壁や家具などに付着する」ということも言われていますので、これらをしっかり取り除くためにはクリーナーヘッドだけではだめで、すき間ブラシやふとんノズルといったアタッチメントの豊富さもアレルギー対策として大きな意味を持ちます。
ただし各種ブラシは別売りもしていますので、付属品が少ない機種の場合、やや割高にはなりますがアタッチメントを別に購入可能です。
各社プレミアムクラススティッククリーナーのアレルギー対策比較表
以下は、クリーナー主要各社のプレミアムクラスを比較した表です。内容はアレルギー対策に寄与する項目に絞ったものとなります。
機種名 | 日立 PV-BH900H | パナソニック MC-VKS8200 | ダイソン SV15ABLEXT | 三菱電機 HC-JD2X | 東芝 VC-CL3000X | シャープ EC-SR5 |
画像 | ||||||
ヘッドの特長 | パワフルスマートヘッド搭載。押しても引いても吸うからゴミの取り残しを減らします | 2種類の毛先の違うブラシで、フローリング、畳、絨毯の奥のゴミまでしっかりかき出し掃除 | 大きなゴミも小さなゴミも同時に吸い取るフラフィクリーナーヘッドと、カーペット繊維の奥深くのゴミを取り除くダイレクトドライブクリーナーヘッドが付属 | グングンかき込みながらしっかりお掃除、自走式パワーブラシ | 回転方向の違う2本のブラシを搭載した新開発オシドリヘッド搭載 | じゅうたんや壁際のゴミをしっかり吸引する新構造「倍トルヘッド」 |
ヘッドの集塵能力の評価 | ||||||
サイクロンのゴミ分離能力 | ゴミと空気を強い旋回気流で分離する「パワーブーストサイクロン」 | ダストボックスのくびれ部分により生じる圧力差を利用した「空圧分離」によりゴミを圧縮し、吸引力が長持ち | 14個のサイクロンが79,000Gの遠心力を生み出して、ホコリを空気から分離し、フィルターに目詰まりをおこさず、変わらない吸引力が続きます | 驚愕の高速回転を実現したJCモーターの働きで、強力な吸引力が99%以上続きます | フィルターレスで2段分離構造の『バーティカルトルネードシステム』により、3つの気流が微細な塵や花粉まで99.9%分離 | ゴミと空気を高速旋回気流で強力に遠心分離 |
ゴミ分離能力の評価 | ||||||
フィルター性能 | 表記なし(クリーンフィルター搭載) | 表記なし(プリーツフィルター搭載) | 0.3ミクロンもの微細な粒子を99.99%捕らえ、部屋の空気よりもきれいな空気を排出します | 0.3μm以上の微細なゴミを99.9%以上逃がさず排気がキレイ | 表記なし | 表記なし |
排気の総合の評価 | ||||||
付属品 | ・ミニパワーヘッド ・2WAYすき間ブラシ ・ハンディブラシ ・ほうきブラシ ・スマートホース 等 | ・すき間用ノズル ・ペタすき間ノズル ・ふとん清潔ノズル ・ ロングホース | ・ミニモーターヘッド ・コンビネーションノズル ・LED隙間ノズル ・ハードブラシ ・延長ホース ・フトンツール 等 | ・アレルパンチふとんクリーンブラシ ・ロングノズル(エアブロー機能)対応 ・毛ブラシ ・ロングホース ・サッシノズル 等 | ・ふとん用ブラシ ・2WAYブラシ ・すき間ノズル 等 | ・コンパクトふとん用ヘッド ・はたきノズル ・スグトルブラシ ・すき間ノズル ・ハンディノズル 等 |
付属品充実度 |
アレルギー対策にオススメのスティッククリーナーランキング
【第1位】ダイソン SV15ABLEXT(dyson V11)
スティッククリーナー部門で最もオススメは、ダイソンのV11 Absolute Extra、型番はSV15ABLEXTです。スティッククリーナーでは、最もスキのないアレルギー対策ができる1台であると言えます。
ポイントはまず、ヘッドが2種類付属していること。ダイソンの代表的なヘッドである「ソフトローラークリーナーヘッド」は、特にフローリングで米粒やペット砂などの大きなゴミやフローリング溝の微細なゴミを取るのが得意な、最近の国内住居に適したヘッドです。
さらに、ダイレクトドライブクリーナーヘッドがあり、こちらはじゅうたんの奥のゴミをしっかり取れるヘッドです。この2つのヘッドを付け替えて使用することができる、珍しいクリーナーとなっています。
そしてポイントの2つ目は、遠心分離の能力やフィルターの性能です。ダイソンのクリーナーはサイクロン式の元祖として、他社よりも高速にゴミを遠心分離する力に長けています。この力で多くの微細なゴミもダストカップの中に収め、お手入れ面を軽減しています。
手元のモーター付近にあるフィルターは、遠心分離しきれなかったより微細なゴミをキャッチする部分で、ダイソンはサイクロンの力が強いため、このフィルターの水洗いは通常1ヶ月に1度で済むようになっています。
このフィルターを通るゴミの最終捕集率は、花粉の1/100ほどの大きさであるわずか0.3μmの微小な粒を99.97%キャッチするレベルとなりますので、排気のキレイさは申し分ありません。
最後のポイントは、付属品の多さ。上記のクリーナーヘッド以外に、ソファ用のミニモーターヘッド、狭いところに届く延長ホース、ふとんダニを取るフトンツールなど、家中のアレルゲンに対応できる豊富さとなっています。
【第2位】三菱電機 HC-JD2X (iNSTICK ZUBAQ)
第2位として、三菱電機のiNSTICK ZUBAQ (インスティック ズバキュー)型番:HC-JD2Xが挙がります。
画像の状態は収納されている姿で、持ち手を手前に引き出すとスティック状態、上に持ち上げるとハンディ状態で取り出すことができる、スタイリッシュなクリーナーです。
装備しているヘッドは同社の標準的なパワーブラシタイプですが、効率の良い小型モーターの恩恵でしっかりとゴミを遠心分離して、吸引力の持続率99%を実現しています。
また、排気面にも気を配っており、銀ナノHEPAフィルターを通ることで、最終的に0.3μm以上の微細なゴミを99.9%以上逃がさずにきれいな排気を出す設計となっています。
国産のクリーナーとしては排気面・パワー面でバランスの取れたスティッククリーナーで、アレルギー対策として国内メーカーでは一番のオススメ機種です。
キャニスタークリーナー編
機種名 | 日立 CV-SP900H | パナソニック MC-SR580K | ダイソン CY29ABL | 三菱電機 TC-ZXH30P | 東芝 VC-SG910X | シャープ EC-VS530 |
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画像 | ||||||
ヘッドの特長 | パワフルスマートヘッド搭載。押しても引いても吸うからゴミの取り残しを減らします | V字構造で、吸引力の強いブラシの中央にゴミが集まり、逃さず吸い込むことが可能 | フラフィクリーナーヘッドとダイレクトドライブクリーナーヘッドが付属 | 前側のメイン吸引と後側のサイド(2ヶ所)でブラシの隅までしっかり吸い取れる自走式パワーブラシ | ラクトルパワーヘッド。自走式の軽やかな動きで床の菌を99%除去 | ブラシ回転数を従来比約2倍アップ、した倍トルヘッド |
ヘッドの集塵能力の評価 | ||||||
サイクロンのゴミ分離能力 | 吸い込んだ空気を効率よく加速させて発生した力強い旋回気流で、ごみと空気を遠心分離するので、吸引力の持続率99%以上 | 「ダブルメタル」で、ダストボックス内部のゴミの付着を抑え、強力パワーが99%以上持続 | 2層に配列されたサイクロンが強力な遠心力を生み出し、花粉やカビを含む微細な粒子を捕らえます | 大口径サイクロンが生み出す高速遠心分離で強い吸引力が続く。吸引力が99%以上持続 | バーティカルトルネードシステムでチリや花粉を99.9%分離 | 使い始めの強力パワーが99%以上持続する2段階遠心分離サイクロンを搭載 |
ゴミ分離能力の評価 | ||||||
フィルター性能 | クリーンフィルタや高集じんフィルターなどーで0.3~10μmの塵埃を99.999%キャッチ(※IEC基準で測定) | 3つのフィルターで0.3μm以上の微細じんを99.9%キャッチ(※自社試験ゴミで測定) | ポストモーターフィルターで0.3μmの微細な粒子をほぼ100%キャッチ(※IEC基準で測定) | HEPA・ULPA2枚のフィルターにより0.3μm以上の微細なゴミを99.999%逃さない(※IEC基準で測定) | 排気清浄フィルター等で粒子径0.5μm以上の微細塵を約99%捕じん(※自社試験での測定) | 表記なし(ウレタンフィルター搭載) |
排気の総合の評価 | ||||||
付属品 | ・パッとブラシ ・ほうきブラシ ・ワイドふとんブラシ ・すき間用吸口 | ・ワンタッチ手元ブラシ ・ふとん清潔ノズル ・すき間ノズル | ・コンビネーションノズル ・フトンツール ・カーボンファイバーソフトブラシツール ・タングルフリータービンツール ・リーチアンダーツール | ・2WAYロングノズル(エアブロー対応) ・アレルパンチふとんクリーンブラシ ・エアブローノズル ・ブローはたきノズル | ・ロングアタッチメントセット ・電動ふとん用ブラシ ・隙間ノズル | ・すき間ノズル ・ベンリブラシ |
付属品充実度 |
備考
ダイソンのV4 digital、三菱電機のTC-ZXH30P、東芝のVC-SG910Xは2020年の発売機種ではありませんが、いずれも2021年1月現在の最新機種で、各通販サイト等で購入可能です。
アレルギー対策にオススメのスティッククリーナーランキング
【第1位】ダイソン CY29ABL (V4 digital)
キャニスター型の1位も、ダイソンのサイクロンクリーナー、V4 digital (型番:CY29ABL)をおすすめ。
スティッククリーナーのSV15ABLEXT同様に、ソフトローラークリーナーヘッドとダイレクトドライブクリーナーヘッドの2種類を標準で同梱しており、ヘッドの集じん性能とサイクロン部分のゴミ分離性能、排気のクリーン性能、フィルターお手入れ面でいずれも高いレベルにあり、付属品も充実。
以前発売していた機種では、厳しいと言われるスイスアレルギー協会の認証を取るほどにアレルギー対策に配慮してクリーナーを開発しているメーカーだけに、うってつけの1台です。
【第2位】三菱電機 TC-ZXH30P (風神)
【第3位】日立 CV-SP900H (パワかるサイクロン)
3位には日立のSV-SP900H。「パワかるサイクロン」という、パワーと軽さをいいとこ取りしたクリーナーです。
2位のTC-ZXH30Pと似ているところがあり、ヘッドの性能、吸引力や排気のクリーンさ、付属品の充実度も、三菱電機と同じく高いレベルにあります。
ただ、小型クリーナーのため遠心分離の性能としてはやや弱く、ダストカップ上部にあるプリーツフィルターが汚れやすく、お手入れ面でマイナスがあり、3位としました。
その他のカテゴリーのクリーナーはアレルギー対策にはどうなの?
では、その他のカテゴリーのクリーナーについてはアレルギー対策にどうなのでしょうか。メーカーごとのまとめではありませんが、それぞれのカテゴリーでおすすめの機種も紹介します。
紙パック掃除機はどう?
【排気クリーンにはできるが、ランニングコストが気になる】
紙パック式はサイクロンクリーナーに比べると、吸込仕事率や集塵力が高い機種が多いものの、排気の性能が紙パックの良し悪しに依存されることが多いため、いわゆるプレミアムクラス以外は平均的に排気のレベルが高くありません。
その中で、日立のCV-KP900Hは、日立最上級の紙パックフィルター(GP-2000FS)を初期搭載し、密閉性の高い高密度構造の設計となっており、紙パックの後方にあるフィルターと合わせてIEC測定基準で99.999%のゴミの捕集率を実現しています。同社のプレミアムサイクロン掃除機と並ぶ排気クリーンさを持ち、国内の紙パック式クリーナーでもトップクラスのクリーン排気です。
逆に言うと、数千円で購入できる紙パック式掃除機でも、最上級の紙パックを装着すれば、比較的高い排気レベルが実現できるということになるのですが、そういった紙パック自体が3枚入りで市場価格1,200~1,500円ほどと高価で、ランニングコスト面が気になります。逆に言うと、仮にCV-KP900Hの紙パックを標準からもっと廉価のものに変更した場合に、排気レベルが下がってしまう点がデメリットです。
通常のクリーナー+ふとんクリーナーという選択肢も
通常の掃除機とは異なり、布団やベッドの掃除に特化したのが、レイコップをはじめとする「ふとん専用ダニクリーナー」です。外に布団を干せない環境の場合、梅雨時などにフトンにダニが繁殖しやすくなるため、掃除機にふとんブラシをつけて布団を掃除したり、また専用に作られたふとん専用クリーナーを使ってダニを除去すると、喘息やアレルギー、花粉対策として有効と言われています。