はじめに
中国・武漢を発症源とし、2020年に入ってから、日本に寄港した海外の大型クルーズ船内での集団感染によってその存在が広く知られることになった「新型コロナウイルス COVID-19」。クルーズ船内以外での国内感染者は420人、死者は6人を数えます(2020年3月7日現在)。
(※2020年4月14日現在で国内での感染者は7,645人、死者は109人となっており、感染が急速に拡大しています)
【追記】
2020年のゴールデンウィーク頃まで拡大した国内の感染者数は、4月~5月に渡った1度目の緊急事態宣言による外出自粛・休業・テレワーク等の効果もあり、その後やや落ち着きを見せましたが、8月の夏休み周辺で再増加し、さらに11月以降いままでに類を見ないペースで感染者が増えており、2021年に入り一日で数千人を数えるまでになりました。
政府は、2021年1月7日に、特に首都圏の感染者が多くなっていて医療機関の病床数が逼迫していることなどを踏まえ、1月8日~2月7日までのあいだ、東京・千葉・神奈川・埼玉の1都3県に2度目の緊急事態宣言を発出しました。
ワクチンや治療薬が確立されていない現状もあり、感染者の中で比較的若年層の方は症状が軽いということも言われていますが、自覚のない軽症感染者が高齢者へと移してしまい、重症化するケースもあることで、日本国内には東京都を中心として4月に緊急事態宣言が発出されました。
学校へは登校自粛の通知がなされ、子どもたちは学校で友達と会えない状況となり、また企業でもテレワークを推奨され、生活に必要な業種以外の店舗は営業を一時見合わせているほか、様々なスポーツやイベントなどが延期・中止を余儀なくされ、多く人の集まる場所での開催ができない状況でもあります。
そして何より、冬から春先にかけて、従来であればインフルエンザ、風邪、花粉症対策に威力を発揮するマスクが品薄となり、生活や仕事に支障の出ている方が増えています。一部では高額転売や盗難などのニュースも聞きます。
このような国内の事情を踏まえ、当サイトでも「排気のきれいなクリーナー」に関する記事の閲覧数が増加しています。
通常であれば3月ですと花粉症に関して掃除機が対策となるかどうかを知りたい方が多いのだと予想していますが、こういった状況下で当サイトを訪れていただいているのは、おそらく新型コロナウイルスへの対策として、掃除機・クリーナーはどうなのか。その点を気にしている方が多くなっていると思います。
このページは、現在まで知られているウイルスに関する情報を筆者なりに判断し、掃除機が新型コロナウイルス対策になりうるのかを考察したものとなります。文章が長くなりますし、また中には他者の意見とは異なる部分があるかもしれませんので、ご了承ください。
新型コロナウイルスの特徴
「新型コロナウイルス」は、ヒトに感染する7つのコロナウイルスのひとつで、2019年11月に中国・武漢で感染がはじめて確認されたものです。多くのコロナウイルスは風邪に似た軽い症状ですが、2002年に話題となった「SARS」は重い症状をもたらすコロナウイルスのひとつです。
「ウイルス」というとおり、非常に小さく目には見えないものであり、新型コロナウイルスも、インフルエンザウイルスも、大きさは100ナノメートル(=0.1マイクロメートル=1ミリの10000分の1)程度の大きさと言われます。この小さいウイルスは、細胞を持っていませんが、ヒトの体内に入ることで自分のコピーを作らせ、他の細胞に入り込み、増殖していきます。
新型コロナウイルスがヒトからヒトへ感染する原因としては、現在のところ感染者の咳・くしゃみ・唾液などを他者が吸い込んだ際に感染する「飛沫感染」や、感染者が咳などをした際に手で抑えたあと、その手で触れた物を他者が触れ、その手で口や鼻などを触ると粘膜から感染するという「接触感染」のいずれかの可能性が高いとされています。
感染者がくしゃみや咳をして、水分を含んだその飛沫自体を他者が吸い込んだ場合には感染のリスクがありますが、飛沫の水分が蒸発し、飛沫核といわれる粒子だけになって空気中を浮遊している状態、いわゆる空気中のウイルス源を吸い込んで発症するような「空気感染」については起こらないと考えられています。
本題からはずれますが、たとえば同じ感染症でも、重篤な肺炎をもたらす「結核」や、高熱と発疹などが起こる「はしか」については空気感染の可能性があるもので、そのためBCGワクチンやはしかの予防接種を日本人は乳児~幼児のときに行います。まだ確定的な情報とまではなりませんが、BCGワクチンが新型コロナウイルスに有効であり、そのため国内での感染者はアメリカやヨーロッパのような爆発的増加に至ってないのではないかという仮説もあります。
【追記】
2021年1月現在、米ファイザー社など複数の企業が新型コロナウイルスに有効とされるワクチンを製造し、接種が世界各国で行われています。日本国内でも、2021年2月下旬より医療関係者などを先駆けに、ワクチンの接種が開始されると報じられています。
新型コロナウイルスは空気感染の恐れは確認されていないため、仮に感染者と接触した可能性があっても、マスクを着用していたり、手や指、口中に付着したウイルスを流すため、こまめな手洗い・うがいを行うことが有効な対策として見られています。
新型コロナウイルスについての詳細な情報は、厚生労働省HPで随時更新されていますので、ご参考ください。
ウイルスを掃除機で除去することはできるのか?
ウイルスは非常に軽く微細なものであり、基本的には空気中を浮遊している状態がずっと続いていると言われます。上述の通り、空気中の飛沫核やウイルスについて、それだけを吸い込んでも新型コロナウイルスやインフルエンザの感染の恐れはほとんど無いようですが、かといってウイルスが床に落ちることも期待できません。
掃除機で吸い取るのは床に落ちているホコリや粒ゴミ、小さくても花粉など目に見えるものがほとんどで、そういったものは床に落ちます。これらにウイルスが付着していることもありえますが、量は多くないはずです。
そうなると、ウイルスというものがほとんど空気中に漂っているということになるため、掃除機やクリーナーでウイルスを直接吸い取ったり除去したりということは難しいのではないかと考えます。
空気清浄機という選択肢は?
掃除機と形は違えど、システムが似ているものとして「空気清浄機」があります。掃除機はモーターで起こした強力な風によりヘッドからゴミを吸い込んだり、ブラシでかき込んだりしてゴミを取り、内部のダストカップやフィルターにゴミを収め、排気を空気中へ放出します。近年は良質なフィルターのクリーナーもあり、空気よりもきれいな排気を謳うものも珍しくありません。
空気清浄機は、掃除機に比べると弱い風の流れになりますが、部屋中の空気の流れを循環させるようにして吸い込み、フィルターでホコリや花粉、ウイルスをろ過させて、きれいな空気を放出します。空気清浄というもともとのコンセプトから、フィルターは高品質のものが多く、花粉症対策にも一定の効果があります。
ただし残念ながら、掃除機でも空気清浄機でも、搭載しているフィルターに新型コロナウイルスが入ってきたとしても、通り抜けてしまうほどの小ささです。「新型コロナウイルス対策」とだけ考えるなら、掃除機であっても空気清浄機であっても、どちらの選択肢も大きな効果は期待できません。
私達にとって幸運なのは、ウイルス自体は上述の通り飛沫核として、吸い込んでも発症しない状態で浮遊しているので、普段吸い込んでいる可能性が高いですが、それを自覚できないことです。
飲食店などで、対面でマスク無しで話をすることや接触することが最も感染リスクは高いですが、お互いにマスクをしていれば飛沫を飛ばしたり、吸い込むことが減ります。もちろん、家の中では家族以外の他人が基本的にいないため、感染リスクは最も低い環境であるといえます。家の中で空気中に新型コロナウイルスが漂っていたとしても、水分をまとっている状況である可能性はほとんどないので、掃除機や空気清浄機では対策として難しいですが、ステイホームしていればより安全に過ごすことができます。
本気で対策するならパナソニックの次亜塩素酸 空間除菌脱臭機「ジアイーノ」がおすすめ
最近になって、空気清浄機とは異なる「ジアイーノ空間除菌脱臭機」がパナソニックから発売されていますが、これが菌・ウイルス対策に効果を発揮することが話題となっています。
次亜塩素酸で空気を洗うというこの商品は、水道水と塩で「次亜塩素酸」という物質を作り出し空気中に放出することで、部屋に付着した菌やウイルスを抑制します。本稿とは関係がありませんが、ペット臭などのニオイにも強力な脱臭効果があります。
ドアノブ、ソファ、カーテン、リモコンなど、掃除機や空気清浄機ではなかなか除去しにくい場所に菌やウイルスが付着していて、これらの抑制に効果があるのがジアイーノです。
現在、ウエットティッシュや消毒用アルコール関連商品が品薄ですが、手指をこれらで清潔に保つことだけでなく、逆に人がよく触れる物であるドアノブやソファなどもジアイーノで清潔に保っておけばより安心であるということです。上記に述べた「接触感染」の危険性に一定の効果を見込むことができそうです。
これができる家電製品は現在、パナソニックのジアイーノシリーズのみとなっており、人が集まり、なおかつ感染のおそれもより高くなる医療機関や介護施設、幼稚園などにも軒並み設置されてきています。
ジアイーノは部屋の広さに応じて複数の機種が出ていますが、新しい技術と高い安全性を持つものだけに、通常の空気清浄機よりも割高になっています。本気で菌やウイルス、そして強いニオイに対して効果を得たいという方はぜひ検討されてみてはいかがでしょうか。
おわりに
当サイトは掃除機・クリーナーのおすすめを紹介するサイトですから、理由をつけて本稿でも掃除機を勧めることはできるかもしれません。
しかし、空気中に無数のウイルス源がある状況で、空気清浄機が100%それを取りきれるかというとNOですし、床にあるゴミやカーテンのホコリを掃除機で吸い取ったとしても、直接的に新型コロナウイルス対策とはなりません。上記の「ジアイーノ」も新型コロナウイルスへの対策に効果があると謳っているわけではもちろんありませんので、あくまで筆者なりに選択肢のひとつとして挙げさせていただいたものです。
この新型コロナウイルスが拡大を続ける中、私達にできることというのは、感染を抑えるために、人が密集する場所ではマスクの装着を心がけたり、帰宅したら必ず手洗いうがいを行うこと。これがまず第一の基本であると思います。こうすることで今回の新型コロナウイルスも、毎年のインフルエンザに対しても効果があるのは間違いありませんので、ぜひこうしたウイルスを恐れずに、対策していただきたいと思います。